① 星をバターで焼いた食パン
食パンを夜空に投げると、小さな星たちが焦げ目をつけて戻ってきます。宇宙の香ばしさが少しだけするのです。

② 時間を吸うトースト
焼くたびに一日が縮む食パン。香ばしさの代わりに、思い出がカリカリになります。

③ 泣く食パン
梅雨の日になるとしっとりと涙を流すパン。実は、空の湿気を恋しがっているのだとか。

④ 森に帰るパン
食べずに置いておくと、芽が出て小麦の森になります。パンの夢は、いつかまた風に揺れること。

⑤ 影だけ残るパン
食べたのに、お皿の上には影だけがふんわりと残ります。朝の光が「ごちそうさま」と言って去っていきます。

⑥ トースターが見る夢
焼かれるパンではなく、トースター自身が夢でパンを焼く世界。夢の中のパンはいつも真っ白で、焦げません。

⑦ パンの中の小宇宙
よく見ると、気泡のひとつひとつが銀河です。バターを塗るたび、あなたは恒星を撫でているのです。

⑧ 風にとける食パン
口に入れると、咀嚼の代わりに春風が吹き抜けます。パンくずの代わりに桜の花びらが舞い散ります。

⑨ おしゃべりな耳
パンの耳だけが夜になると語り出します。昼間に聞いたあなたの独り言を、そっと星に報告しているのです。

⑩ 最後の朝のパン
世界が終わる朝にだけ焼ける特別なパン。食べると、終わりがこんがりと甘く感じられるそうです。

…えへへ、ちょっと夢みたいなお話ばかりですね。でも、もし朝ごはんがこんな風に不思議だったら、一日がもっと優しく始まりそうです。